ピロリ菌とは
ピロリ菌は正式にはヘリコバクター・ピロリという細菌で1983年にオーストラリアのウォレンとマーシャルらによって発見されました。
ピロリ菌が慢性的な胃炎、胃・十二指腸潰瘍などの原因になっていることがわかり、1990年以降、ピロリ菌の研究が盛んに行われ胃の様々な病気との関連がわかってきました。
日本人のヘリコバクター・ピロリ菌
感染者数
日本人のピロリ菌感染者はおよそ3000から3500万人いると言われています。
50歳以上の人で感染している割合が高いとされており、感染率は60%以上にのぼるとされております。
衛生環境に関係しており、下水道が普及していなかった世代に感染が多くみられます。現在でも井戸水を日常的に使用している地域ではピロリ菌の感染率が高い状態です。
また、乳幼児にピロリ菌感染の親が食べ物を口移しすることで感染が広まっている可能性も言われております。
ピロリ菌に感染するとどうなる?
どのような病気を起こす?
ピロリ菌は胃粘膜に存在し粘膜を傷つけます。そのために感染したほとんどの人に胃炎が起こります。ピロリ菌感染が続くと「ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎」になります。
その胃炎が長期間続くと胃潰瘍や十二指腸潰瘍、胃癌の発症につながります。
胃潰瘍や十二指腸潰瘍、びらん(粘膜の浅い傷)などを繰り返される患者様の多くはピロリ菌が感染しております。
その他にピロリ菌は、胃MALTリンパ腫、胃ポリープ、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、慢性的な貧血などの原因となることもございます。
ヘリコバクター・ピロリの検査について
ピロリ菌は胃にすみつく細菌です。
感染を調べるには胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)で直接胃の中を観察した上で、胃の粘膜の一部を採取しピロリ菌の有無を確認する方法が有効です。
その他の方法としましては、血液検査(血清ピロリ菌IgG抗体)や尿素呼気検査、便検査(便中抗原)、尿検査(尿中抗体)があります。
いずれの検査でも精度が100%ではないため、場合によっては2つ以上の検査を組み合わせてピロリ菌感染の有無をチェックすることもあります。
- 【 検査1 】 胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)胃の粘膜の一部を採取
- 【 検査2 】 血液検査(血清ピロリ菌IgG抗体)
- 【 検査3 】 尿素呼気検査
- 【 検査4 】 便検査(便中抗原)
- 【 検査5 】 尿検査(尿中抗体)
健康保険適用でのヘリコバクター・ピロリの検査、除菌について
下記疾患の場合、健康保険適用でのヘリコバクター・ピロリの検査、除菌が行えます。
- ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎
(萎縮性胃炎) - 早期胃がんに対する内視鏡的治療後
- 胃・十二指腸潰瘍
- 胃MALTリンパ腫
- 特発性血小板減少性紫斑病
ピロリ菌の除菌療法について
除菌療法は、1種類の『胃酸の分泌を抑える薬』と2種類の『抗菌薬』の計3種類の薬を同時に1日2回、7日間服用する治療法です。
いなくなったかどうかの判定は服用終了後4週間以上経過してから前述の方法で検査します。
検査で陰性なら除菌成功です。
失敗した際には再度、抗生剤を変更して行います。いなくなったかどうかの判定は前回の治療後と同様です。
ピロリ菌の除菌療法は、残念ながら100%の成功率ではございませんが高確率で除菌することができます。
除菌療法では抗生剤を使用しますので、薬のアレルギーや内服中の薬がございましたら必ずお伝えください。
ご留意点
- ピロリ菌感染のチェックを受けられる場合には一度胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)で慢性胃炎や胃がんの有無などをチェックする必要があります(保険でも定められています)。
- ピロリ菌の除菌後も残念ながら胃がんになる可能性はあります。そのため除菌後も胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)で定期的な検査をお勧めいたします。